『皇后の碧』阿部智里

読書記録

もう早いもので7月になってしまいました。こんにちは、虚無感大学生です。
先月は色々と予定が重なって、読了した本はなんと1冊。気になった本をまとめ買いするタイプなので、思いがけず積読が増えてしまいました。
7月は読書時間も大切に生きていきたいと思う今日この頃です。

新たな世界への旅立ち

推し作家様の新作は見逃せない

本日ご紹介するのはこちら!
『皇后の碧』阿部智里(新潮社、2025年)です。

5月30日に発売されたばかりの新刊です。
大好きで愛読中の大人気シリーズ『八咫烏シリーズ』の作者、阿部智里先生の新作!
発売情報が出た時からウキウキで、店頭に並ぶや否や飛びつくように買ってしまいました。好きな作家さんの新刊を待ち望むファンあるあるかもしれません笑

表紙には美しい方のご尊顔がドーンと描かれています。これはパケ買いもやむなしの美しさです。
彫りの深いお顔にうねる黒髪、『碧』の衣服に装飾品。イケメンな女性の方にも見えるし、美人な男性の方にも見える、中性的なお顔のこの方、一体どこの誰なのか。裏表紙には紋章と昆虫系の翅。絵柄が繋がっていないので、この方の翅なのか、別のものなのか。表紙と裏表紙だけでもワクワクが止まりません。

そして今回、加えて見てほしいのが背表紙。
本屋さんで買った際は表紙が見えている状態で並んでいたので気づかなかったのですが、本棚に並べたら背表紙がカッコ良すぎて惚れ惚れしてしまいました。どこかの国の古文書のような壮大なデザイン。白背景に箔押しの文字がこれから始まる物語の始まりをより一層引き立ててくれるような、、、。

背表紙って、単行本の1番の醍醐味なんじゃないかなって個人的に思っています。字体、デザイン、背景からその本だけの特色が滲み出ているところ。ほんの少しの面積に、手を取りたくなる情報が詰まっています。そんな良さに心打たれてからは、ちまちまと単行本も買うようになりました。安さを求めるオタクだったので、単行本の本は文庫化するまで待つことが多いタイプ。ズラーっと揃った背表紙を並べる文庫本の良さもいいですが、それそれ全く違う背表紙を持つ単行本の良さも格別です!

最近買った単行本達。それぞれの良さが光り輝いていて眼福です。
素敵に飾れる本棚が欲しい!

あらすじ

帯に書かれていたあらすじはこちら。

かつて火竜に家族を焼かれた少女ナオミは、風の精霊を統べる皇帝から「私の寵姫の座を狙ってみないか?」と突然誘われる。皇帝の後宮には風の精霊の皇后と、火の精霊と水の精霊の愛妾がすでにおり、彼の胸には皇后の瞳の色に似ている緑の宝石が連なる首飾り「皇后の碧」が常に輝いていた。高位な精霊でもある愛妾たちの棲む地に馴染めるよう、年老いた宦官長とまじないの修練を重ねつつ、己が選ばれた理由を解き明かそうとするうち、ナオミは後宮が大きな秘密を抱えていることに気づいていく。
誰が味方で敵なのか、後宮は何を隠しているのか、
そして「皇后の碧」が真に意味するところとはーーーー

舞台は、風と火と土と水の4種の精霊が棲む世界。それぞれの元素で体を構成し、それぞれ得意なまじないを持って暮らしています。
主人公のナオミは、土の精霊だが、幼い頃に両親を亡くし風の精霊である孔雀王に助けられました。してその一族である鳥の一族の城で女官として生活中。
孔雀王には女官としてはもったいないぐらいに目をかけてもらい、嫌味を言ってくる人もいるけども気にかけてくれる友達もいる、そんな日々。

物語は、孔雀王の妻アビゲイルが王の妻の役を降りたいと懇願し元素へ還る儀式から始まります。
それから数日後、孔雀王の次の妻を選ぶため、風の精霊の皇帝『蜻蛉帝』がやってきます。
その時に蜻蛉帝に召されてしまったナオミ。残酷で恐ろしいと噂の蜻蛉帝に気に入られ、寵姫の座を狙うために後宮に入ることに。
そして隠された後宮の謎と陰謀に振り回されていく、、、、、、

ネタバレをくらわずにまずは読んで欲しいという思い

最後まで読めばわかる阿部智里節

読み終わった最初の感想は、「まぎれもなくこれは阿部智里先生の作品だ、、、、」でした。
絶対絶対、今回ももう1度最初から読み返したくなります。
わたしが1ヶ月に1冊しか読めなかった原因は、忙しかったのもありますが2回読み返したからです。
今回もやってくれたな、、、と思いました。八咫烏シリーズを愛読中の方には激刺さりだと思います。現にわたしが刺さっているので。それくらい、咀嚼するのに時間が欲しくなるストーリーになっています。

わたしは、物語の設定や状況を読んだ瞬間に飲み込めるタイプではないので、ゆっくりゆっくり咀嚼しながら読みます。脳死で読んで無意識に感情を引き出せられる小説も大好きですが、頭がこんがらがって逐一振り返って整理しながら読む小説も大好きです。絶対にどこかで設定が示されているはずなのに、読み落としたのか自分が察せなかったのか、突然頭の中で繋がらなくなってもどかしいあの瞬間。その後繋がった時のモヤが晴れたようなあの開放感。連続で読むのは疲れますが、定期的に摂取したくなる感覚です。阿部先生の作品は、もちろん後者。緻密な世界観に、散りばめられている伏線が物語を複雑化していきます。あ〜!そういうことか!という独り言が無意識に出てしまうほど、分かった時の開放感が半端ない。ですが、それだけじゃないんです。八咫烏シリーズをご愛読の方はわかると思うのですが、阿部先生の作品は1ページ読むごとに振り返りたくなるだけじゃなく、絶対に読み終わってからも読み返したくなるんです。自分なりに咀嚼してあとはゴールだけだ!とラストスパートを切ろうと思ったら突然後ろから巨石が追いかけてくる感覚でしょうか。ポイントは、前からではなく後ろからというところ。何が起こってるかわからないけど、1ページずつ読み返している場合じゃないんですよね。ゴールまでもう突っ走るしかないんです。ゴールして、なんだったんだあれはと振り返ったら追いかけてきたはずの巨石がなくて余計に混乱するやつ。焦ってスタートに戻ってもう一度ゆっくりゴールを目指してみたら、1回読んでた時には全く気にも留めなかった場所が伏線だったりするんですよね。
本当に末恐ろしい物語をお書きになられる、、、、それを『皇后の碧』でも堪能できます。

世界の感じ方は人の数だけある

事実は同じでも、その事実についてどう受け取るかって人の数だけあるんですよね。その事実に至った背景、自分の立場などなど、ありとあらゆるエッセンスが私たちの思考にまとわりついてくるからです。

皇后の碧をはじめとする阿部先生の作品って物事を多視点で見るからこそ起こるすれ違いや思い違いの描写が上手だなといつも感じます。登場人物たちだけでなく、私たちも一緒になってある一方の視点に囚われます。でもその視点は嘘じゃないんですよね。情報が少し欠けてたり、私情が入ったりするだけ。なのにこんなにも物事の見方が変わるんだと毎回悔しくなります。最後まで、今見てきたものが正しいんだと思ってきた自分に。それが正しいときもありますけども、1視点だけに囚われるのは本当に危ないと学びました。広い心と目をもって、自分だけではなく他視点でも物事を見ることって大切だ、、、。そうすれば、すれ違いや思い違いが起こる前に予防することもできますし、もし起こってもこう考えてたからだよねってすぐ理解できます。

わたしはまだ、こうしたすれ違いや思い違いに現実で遭遇したことがないのですが、物語を読む中で実害なく最悪なケースに陥った場合に遭遇したりします。物語で擬似体験しているので、現実ではこういう状況にならないようにするぞ、、、!と気を引き締めるきっかけになったりします。そう考えると、現実逃避しているようで、意外と社会勉強しているのかも、、、?

終わりに

この『皇后の碧』は、シリーズなんでしょうか、、、?
が、読み終わった時に2番目に思った感想です。終わり方としては、1区切りついている気もするし、続けようとするならば続けられそうな感じ。
八咫烏シリーズが、来年刊行の最終巻で完結すると大々的に言っているので、それに合わせた新シリーズなのかな〜と思っていたんですが、先生のインタビューを読む限りだいぶ前からお話が進んでいてようやく刊行できた本だったらしい。これは、続かないかな〜〜というのが本音。

今回のブログでは、どうしても核心に迫るネタバレに触れてほしくなくてだいぶ濁した感想を書いてきました。(理解を深めてネタバレありの感想も書きたい気持ち)
こんなにしっかりとした世界観がある物語で、1部分しか私たちは覗けないのがもどかしい。
その後のお話だって見たいけど、あの人が〇〇であるとする現在の描写も見たいし、あの人があの人を〇〇した時の話とか、、、、(何もわからない)
はっきり言えるのは、ナオミじゃない別の登場人物視点での物語も読んでみたい!ということ。
是非是非、お待ちしております、、、、

最後に雪哉のモクリルとパシャリ🎥

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

皇后の碧 [ 阿部 智里 ]
価格:1,980円(税込、送料無料) (2025/7/8時点)


タイトルとURLをコピーしました